ボヘミアン・ラプソディ(話の流れとちょっとした感想)

きのう、QUEENのドキュメンタリー映画「ボヘミアン・ラプソディ」をフォロワーさんと一緒に観に行ってきた。QUEENは超有名曲しか知らなくてボヘミアン・ラプソディっていう曲も知らなかったんだけど、ツイッターで話題になっていたのとイエローモンキーのメンバーも観たということを聞いて気になった。にわかの段階にすら上がれていない。知らないから観るっていう理由でもいいかなと思って。

フレディ以外のメンバーの名前や出身地などの情報も仕入れずにまったくの無知で観に行ったから、バンド加入前のフレディの姿を見て「え??誰??」状態。フレディがインド系の人だということも知らなかった。「パキ野郎」なんて揶揄されて、歯が出ていることもバカにされてしまうような場所で暮らしていたけど(外国人ってめちゃくちゃ歯を気にするよね)、そんな状況に負けずにフレディは自分のスタイルや音楽を貫いていた。独創的な曲作り、曲の構成、歌詞。何もかも当時の人からすれば斬新で衝撃だったと思う。ボヘミアン・ラプソディを発表した(反対を押し切ってラジオ番組に強引に曲を持ち込んだ)ときのメディアの評価が画面いっぱいに表示されていたけれど、どれも低評価なものだった。それでも言いなりにならずに貫いた。自分たちがこれが良いというものをとにかく押し通していた。そこが痛快で格好よくて、自信に満ち溢れてキラキラしていた。けれどそのキラキラはずっと続くものじゃなく、メアリーとの結婚生活にも亀裂が入りはじめて次第に様子がおかしくなり、その痛々しさが切なかった。自分の曲にメアリーへの思いを込めて聴かせたシーンは、お互いの信頼関係が非常によく描かれていて感動的ですらあったけど、自分の夫がゲイだってことに気づきながらも黙っていて、告白されてもなお、「これからの人生は大変になる」とフレディのことを優しく受け入れているメアリー。「つらいのはあなたが悪くないということ」というセリフ。何もかもフレディのせいにできてしまえば楽だったのかもしれないけれどメアリーはそうしなかった。神様ですか。かなり無理していたのかもしれないけれど。映画を観て思ったのは、フレディがゲイだってことに対して差別的な目を向ける人がメディアだけだったというところ。周りのバンド仲間や家族や友達や奥さんは決して差別的な発言はしなかった。というか描かなかっただけ?実際のところどうなんだろう。

フレディが別居婚をはじめた夜、寂しくなってメアリーに電話して「乾杯しよう」「お酒をグラスに注いで」と言ったときにメアリーは何も動かずただ受話器を持っていた(お酒をグラスに注いでないのに、注いだと言った)シーンは本当にもうただただ苦しかった。そういう、明らかにフレディが痛々しくなってくるシーンが後半は山盛り。恋人(ポール)がいても、メアリーへの思いは空振りし、バンドメンバーとは喧嘩ばかりし、マネージャーを勝手にクビにし、メンバーには黙ってソロ活動を始め、自分がいなければお前たちはここまで来れなかったと言う始末。心を巣食う深い深い闇を消し去ろうと友達ですら無い人と交流し、欲や快楽におぼれていく生活。そして、フレディはエイズに侵されてしまった。前半がトントン拍子に事が進んで売れまくっていく描写があっただけにかなりつらい。

いっときはバンドを離れていたけれど、最終的に戻って再活動するストーリーにはどうしてもイエローモンキーを重ねてしまう。あちこちに飛ぶ曲の構成や、パフォーマンスも何となく重なる。吉井さんがこの映画を観て泣いてしまったというのは、自身と重ねてしまうところがあったからなのかな。またみんなと演奏したい、バンドは家族。1人になるのではなく、独りになってしまうというのは心を狂わせてしまう。共に支えあえる仲間が誰にでも必要なんだ。

終盤のライブエイドでの演奏シーンは圧巻だった。観客が波のようにうねり、はしゃぎ、涙していて、熱を感じた。WE ARE THE CHAMPIONSが流れたときは感動で涙にむせぶかと思ったけどなんとかハンカチを握りしめることで耐えた。この曲は物心ついたころから知っている曲だけどしっかり聴いたことがなかった。こんなにも心をゆさぶる曲だったんだ。ライブエイドだけ観てもきっと感動する。フレディ役のラミ・マレックの演技が忠実で、純粋で、引き込まれる。最終的にフレディは45歳の若さで亡くなってしまうわけだけど、生涯を共にする恋人もできて、メアリーとも良い友人関係でいることができたというのが個人的には何よりの救い。名前とタンクトップのあの見た目しか知らなかったけれど、映画を観ていくうちにフレディがとても身近な人間のように感じた。


あと1つ。この映画は猫好きにとってもたまらない映画だった。猫がのどを鳴らすときの「ごろごろごろごろ…」が映画館で大音量で聴ける。猫映画だと言っても過言じゃない。

クセがすごい。